近鉄奈良駅から徒歩10分。世界遺産に囲まれ、歴史ある建造物に溶け込む菊水楼。明治24年に創業、料亭旅館として約120年の歴史を刻んできた。春日大社一の鳥居前に建つ館は興福寺興善院跡に造られ、寺院から譲り受けた豪華な部材や、折上格天井など、今では再現が難しい建築技術が使われ、国の登録有形文化財に指定されている。
　政財界の名士や文豪などに愛されてきた老舗料亭の伝統は食とおもてなしにもあらわれている。提供されるのは、古都奈良の年中行事にあわせた老舗ならではの本格会席料理。その年その季節に最もおいしい食材を厳選し、持ち味を余すことなく引き出す。五感で楽しめるように、代々受け継がれてきた器を使い、細やかなしつらえや漂う香りにまで心を配る。
　現在は同敷地内に和食レストラン、洋食レストラン、鰻専門店が併設されている。
　料亭の味をよりカジュアルに味わえる「和食 菊水」、昭和42年創業の欧風レストランを平成26年にリニューアルした「洋食 菊水」、そして平成28年、新たに加わったのが「うな菊」。料亭での隠れた人気メニューだった鰻料理を、継ぎ足し使われてきた秘伝のたれそのままに独立させ、外国人を中心に人気を博している。
　地元では昔から結婚式をはじめ、冠婚葬祭の大切な宴に重宝されており、少人数から大人数までかわらぬおもてなしを提供し続けている料亭だ。